住のもの (すのもの)

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「洋服の青山」が売り場面積を半減。スーツが売れなくなった原因と、紳士服業界のこれからについて考えてみる。

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「しょうがなく使っていたものが、コロナにより急速に見直され始めた。」

あるニュースを見て、旧来のビジネスの形が大きく変化しつつあるのを実感しました。

それは、「洋服の青山が売り場を半減する」というニュースです。

このニュースを見て感じたのが、冒頭にも書いたように、しょうがなく使っていた商品やサービスが、考え方の変化により不要になりつつあるということ。そして、どんなビジネスでも永続的なものはなく、企業は常に変化しなければならないということ。

できることなら、数万円もするスーツなんか買いたくないもの。我々サラリーマンは、しょうがなくそれを購入し、毎日着用し出勤しています。まだまだ一般の企業では、カジュアルウェアが許される雰囲気ではありませんが、テレワークでスーツを着ない機会も増え、「スーツもういいじゃん」という気持ちが増殖しつつあります。なんせ、もともと嫌々着ているのですから、何かのきっかけで負のニーズが暴発してしまいますし、まさしく今それが起こっているのです。

今回は、洋服の青山のニュースをもとに、スーツ業界の現状やこれからについて考えてみたいと思います。そこから、どの企業にとっても教訓とすべきことが見出せるかもしれません。

 

この記事の内容

・洋服の青山が売り場面積を半減させる

・以前からスーツ需要は減少しており、コロナが加速させた。

・スーツに対する考え方が変化している。その原因は、クールビズと働き方改革である。

・そもそもスーツは着たくて着ている訳ではなく、スーツ需要が元に戻るのは厳しいだろう。

・紳士服業界はロードサイドに多数の店舗がある。それらの不動産を活かす取り組みは以前からあったし、今後不動産業の色合いが濃くなるだろう。

 

 

 

 

青山商事が400店舗で売り場面積を縮小する

紳士服最大手の青山商事は、400店で売り場面積を最大5割減らすと発表しました。400店は、全店の6割。半数以上です。店舗自体を閉める訳ではなさそうですが、売り場面積全体で言えば、その半数を削減することになります。

店舗のあいたスペースには、コンビニなどを誘致します。

このような大々的な改革は、創業以来はじめてのこと。スーツ量販店という営業スタイルに、かげりが見え始めたようです。

 

昨年末には希望退職400名と80店舗を閉店

実はリストラの動きは、2020年末より始まっていました。11月に早期退職希望者を400名募るのと同時に、80店舗の閉店が発表されました。

紳士服業界が直面する厳しい状況が伺い知れます。

21年3月末の決算では、過去最大の赤字に陥る見通しです。コロナ禍により、多くの店舗で臨時休業が余儀なくされたほか、入学式や入社式が取りやめになった影響が大きいようです。

また、スーツを必要とする多くのホワイトカラーは、テレワークにより出社が減少しました。2020年は、スーツ需要が極端に減ってしまった1年となりました。

 

以前より需要は減少傾向であったが、コロナ禍で変化が加速した

21年3月末の決算見通しは、大幅な赤字であると発表されています。では、その前年、20年3月末の決算は、どうだったのでしょう。

20年も前年と比較して大きく売り上げが落ち込み、最終赤字へと陥っていました。20年3月末の決算であれば、コロナの影響はまだ少ないように思えます。ところが、その影響はかなり大きく、その理由は3月の売上が含まれるからです。

スーツ業界にとって、3月が一番の掻き入れ時。入学式や入社式は4月なので、3月にはスーツを購入し準備しておきます。20年3月はこの大きな需要が消し飛びました。21年の春は、まだまだ集団で集まれるような状況ではないことが予想され、この3月の売上も期待できないでしょう。

しかし、スーツ需要の減少は、コロナだけが原因ではありません。以前から起きつつあった考え方やスタイルの変化が、コロナによって強制的に加速させられたと見るのが合っているでしょう。

総務省の家計調査を見れば、需要の減少が明らかです。同調査によると1世帯あたりの「背広服」の年間支出額は、2000年で8,782円でした。ところが、2019年になると3,642円。半分以下まで減っています。スーツにお金を使わなくなっている現状があります。

スーツの需要が減りつつあるその途上、コロナ禍で物事がいっぺんに進みました。つまり、「スーツ着ないといけないのかな?」という疑問が、「スーツいらないじゃん」という確信に変わりつつあります。

 

 

スーツに対する考え方の変化。その原因は?

では、そのような考え方の変化がどうして始まったかというと、個人的には二つの原因があると考えています。一つは、クールビズ。もう一つは、働き方改革です。

まず、クールビズ。真夏にネクタイするなんてアホらしいからやめましょうという取り組み(もちろん大前提は省エネ)が、瞬く間に一般化しました。

以前は、「お得意先にノーネクタイで訪問するなんてとんでもない!」なんて意識が普通でした。が、今はまるっきり正反対。「ネクタイなんかしたら暑苦しくて逆に失礼だ」というように、考え方が一変しているのです。

クールビズは、ある考えをおじさん達に植え付けました。それは「ラフでもいいんだ」ということ。ラフなビジネススタイルは、アメリカ人のものなんてイメージを持っていたところ、クールビズによりそれが近寄ってきたのです。

しかもクールビズは、国が全面に立って進めているので、免罪符は十分にあります。安心してネクタイをはずせます。小池さん(現都知事の)がああ言ってるし。

もう一つの理由が働き方改革。クールビズの導入により芽生えたラフでいいじゃないという感情。それを加速させたのが、働き方改革です。

働き方改革の前後で変わったこと。スーツの上着の着用です。最近、暑い時は上着を着なくなりました。暑い日にジャケットを脱ぐのは当たり前のことのようですが、ひと昔前は着ることが当たり前。営業マンが上着なしで顧客に訪問するなんて、あり得ないことでした。

クールビズの序盤は、あくまでもノーネクタイの普及。真夏の営業活動。お客さんに訪問する際、首からシルクの布は垂らしてはいないものの、暑苦しいジャケットは着込んでいたものです。

働き方改革が叫ばれ始めてから、上着の着用条件が緩和されだしたような気がします。気温が上がっているという背景もあるでしょう。我慢して非合理的なことはやめようという機運が盛り上がり、従前のクールビズと相まって、気がついたら夏の真っ盛りに上着を着ることはなくなりました。顧客へ訪問する時でも、「上はいいや」とワイシャツのみ。顧客の側も、上着を着こんだ暑苦しいヤツは来て欲しくないのでしょう。受付の電話横に添えられたプレートには、「COOLBIZ中。当社はノーネクタイ、ノージャケットで対応します」とのこと。

 

 

そもそも着たくて着ている訳ではない

まあ、服を選ぶ必要がないという点ではスーツもいいかもしれませんが、そもそも着たくて着ている訳ではありません。ホワイトカラーのサラリーマンとして、着用を求められるからしょうがなく着ているだけ。

量販店で購入したとしても、結構な値段がします。カジュアルウェアでよいなら、全身ユニクロで仕事したいですよね。出費も少なく済みます。

そもそもなんでスーツなのか。製造現場での作業服は理解できます。様々な汚れが付着しますし、危険もあります。駅員さんの制服も理解できます。誰が駅員さんか分かりませんし。お巡りさんがカジュアルだと、なんか安心できません。

しかし、オフィス内で働くのにスーツである必要は?よりリラックスできる服装の方が、作業効率が上がりそうです。別にスーツを着ていなくても、メールは送れますし、エクセルだって使えます。ジーパン履いていてもできます。顧客に訪問する営業担当はスーツでもしょうがないかもしれません。しかし、あくまでも社内を相手にするスタッフ部門までスーツを着る必要はないですよね。

古い会社だと、女性だけ同じ事務服を着ていたりします。会社に出社したら事務服に着替えて、デスクのPCに向かうのです。あの慣習も意味不明です。なんか差別的に感じてしまいます。

今後、スーツの需要は戻るのか。恐らく以前のように戻ることはないでしょう。多くの人々が、「スーツいらないじゃん」を実感してしまいました。今まで嫌々高いお金を出して着ていたものなので、これをきっかけに職場へのカジュアルの浸透は加速していくでしょう。

最近、会議といえばZOOMです。以前は社内会議とはいえ、自宅から参加する社員もフォーマルな恰好で画面に映っていました。下半身は分かりませんが。今は違います。家から参加する社員は、さすがにパジャマではありませんがだいたいカジュアルな恰好ですし、それに対して誰も気にしていません。

 

 

 

これからの紳士服業界。ロードサイドビジネスと不動産業。

スーツ需要減少の流れは紳士服業界が一番実感しているでしょう。今回、青山商事は売り場面積を縮小し、あいたスペースをコンビニなどへ貸し出すことにしました。紳士服業界の強みって、まさにこれなんです。

国道を走行していると、どこに行っても同じような景色が目に入ります。国道16号線が有名です。大きな看板と、大きな駐車スペースを設けた店舗。「洋服の青山」「はるやま」「AOKI」などなど。紳士服業界は、ロードサイド店舗を拡充することによって、業容を拡大してきました。つまり国道沿いにたくさんの不動産があるのです。

この不動産を活かす取り組みは、以前から進んでいました。例えばAOKIは「快活CLUB」というネットカフェを運営しています。あのオレンジ色の看板よく見かけますよね。そのエンターテイメント事業は、売り上げの3割を超えるまでに成長しています。

青山商事は、物語コーポレーションのブランドである「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」をフランチャイズで展開しています。また、リサイクルショップの「セカンドストリート」、100円ショップ「ダイソー」もフランチャイズとして運営しています。青山が運営するダイソーだけで、なんと113店舗もあります。

ただ、これまでは運営子会社を設立し、自社で別業態の店舗を展開するのが主でした。今後はあいたスペースにテナントを誘致するようなので、不動産業的な色合いが強くなるのかもしれません。

不動産で本業の減収を補うといえば、新聞社が思い浮かびます。大阪の中之島には、四ツ橋筋を挟んで2つの巨大なビルがそびえ立っています。フェスティバルタワーとフェスティバルタワーウエスト。実は朝日新聞のビルです。カネカ、日立、凸版印刷、帝人、アサヒビール、キャノン、電通など名だたる大企業の本社や支店が入居しています。本業の新聞部数は減少の一途を辿るなか、不動産業は好調のようです。朝日新聞は、不動産デベロッパーであると言っても誤りではないでしょう。

恐らく、今後紳士服業界は、不動産資産を活かした事業展開を進めていくのではないでしょうか。スーツ屋さんから不動産屋さんへの転換。郊外のロードサイドをメインとした不動産業ということで、何だか面白くなりそうです。アイデア次第で、思ってもみなかったお店が誕生するかもしれません。

 

 

まとめ

洋服の青山は、サラリーマンであればたいてい利用した経験があるでしょう。自分も青山でスーツを購入したこともありますし、THE SUIT COMPANYで購入したスーツは今でも愛用しています。大学を卒業して社会人になる時、おばあちゃんに買ってもらったスーツも洋服の青山でした。今では仕事で、多少関わることもあります。

そんなスーツ業界最大手の青山商事が大ピンチです。今回のコロナ禍は、既存の考え方や常識を覆しました。紳士服業界は、その影響を大きく受けています。ただ、コロナは直接的な原因ではなく、状況を加速させたに過ぎません。そもそもスーツが必要とされなくなっているのです。

今後紳士服業界はどのように変化していくのか。大変興味深いです。紳士服でなくても、あらゆる業界で同じことが起こり得ます。テレビはネットに地位を奪われつつあります。鉄道だってネットに移動の需要が奪われました。明日の地位は決して安泰ではなく、常々変化を模索していかなければならないのです。