地銀の9割で、営業担当者は個人メールが使えないらしい。
えっ、今どき?一般の企業に勤めている立場からすると、ありえないことですよね。社外と連絡することの多い営業が個人のアドレスを持っていないなんて、非効率極まりないでしょう。
社内の連絡だって。メールがないと大変です。何か別のツールを使っているのかというとそんなことはなく、代替手段は恐らく電話とFAX。どうやっているのか、見てみたいものです。
ただこれって地銀だけを笑って済む問題ではありません。個人メールがないのは、地方自治体や中小企業でも見られること。日本全体の生産性の問題でもあるのです。
デジタル化が進まない日本の姿が見えてきます。
地方銀行の9割でメールアドレスがない!
金融庁によって実施された地域金融機関のIT環境を調べたアンケート調査によると、実に91%の地域金融機関で営業マンに個別のメールアドレスが振られていないことが分かりました。地域の金融機関なので、地方銀行だけでなく信用金庫や信用組合も含まれます。
営業マンなので、当然社外の人とやり取りすることが多々あるはず。メアドがないので、電話やFAX、対面でコミュニケーションするしかありません。昭和の営業スタイルです。
書類のやりとりだってメールで送信が不可能。FAX、郵送、持参。確かに営業をしていれば、そのようなアナログな手段も活用しますが、断然メールで送ることが多いです。アナログな手段でしか書類のやり取りができないって、かなり非効率なはず。
金融機関では、声高らかにDXが叫ばれてはいますが、そんなどころじゃない現状があったのです。
これにはもちろんセキュリティという理由もあるのでしょう。ただ、営業マンにメールアドレスを支給することは、そんなにリスクの高いことなのでしょうか。逆に顧客から「めんどくさい」と思われる方がリスクかもしれません。さらには、私用の端末を使用することの方が危険ですよね。
地域金融機関の9割、つまりほとんどの金融機関で導入されていないのは、業界の横並び意識もあったり、金融庁の監督の影響もあったのでしょう。金融庁は、監督方針を見直して通信手段の整備を促進ていくようです。
個人メールアドレスがないのは地銀だけではない
自分の仕事では、地方自治体を相手に営業することもよくあります。実は地方自治体も職員個人のメールアドレスが付与されていないケースが多いのです。メールアドレスはないことはないのですが、各課に共通アドレス1個だけ。例えば福祉課なら「fukushi@〜」というアドレスがあるのみ。送りたい担当者に届くのか、不安でしょうがありません。
連絡手段として、こちらからはメールで送ることが多いのですが、役所からはFAXでくることが多いです。もちろんメールで送付してもらうこともありますが、どうも役所の中ではFAXと電話がまだメインの通信手段という位置付けであるようです。
メールがないのは一般企業でも。大企業では営業マンに個人アドレスがない会社なんて皆無でしょうけど、中小企業ではたまに遭遇します。「info@〜」や「eigyo@〜」といった共通アドレスが、名刺に印刷されているのです。メールを送る際には、携帯ではなく家に電話するような感覚になります。
メールアドレスなんてほぼコストがかからず割り振ることができます。そこには性悪説が横たわっているのでしょう。共通アドレスという衆人監視の環境にしなければ、従業員は悪いことをしてしまうという考えがあるのかもしれません。金融機関においては、そのような考えが少なからず存在しているのでしょう。
そもそも日本企業のデジタル化がやばい
まだまだFAXが現役。東京や大阪の大企業は、だいぶFAXは少なくなってきました。そもそも出社していないケースも多くなったので、わざわざ出社しなければならないFAXなんて使ってられないのでしょう。固定電話が鳴る回数も減ったように感じます。
ただ、地方はまだまだ。バンバンFAXが流れてきますし、バンバン電話がかかってきます。地方でも大きな企業は独自の発注システムなんかを用いていますが、中小企業の注文はFAXばかり。いまだに電話一本で注文してくるところも。今は令和の時代。恐らく平成になる前から変わってないのでしょう。
FAXは結局は紙。アナログです。保管するには場所を取りますし、PDF化して保存するにもスキャンする手間が。初めからPDFで送って欲しいですよね。
一つ一つの手間は小さくても、全体にすればFAX対応にかなりの手間を割いているのでは。海外ではFAXなんてほとんど使われていないと聞きます。コロナ禍で大きく変化すること期待したいですね。
「2025年の崖」が迫る!
FAXなんかはまだ小さな話ではあります。基幹システムもヤバい。まだまだ多くの企業でメインフレームと呼ばれる古いシステムが使用されています。メインフレームは、IBMや富士通といったメーカー独自の仕様で構築されており、拡張性が低いです。IBMのASシリーズが有名です。そもそも1970年や80年代に作られたシステムであり、時代に合わなくなってきています。
そんなシステムをまだまだ多くの企業は使い続けています。メインフレームから脱却することをオープン化といいます。メインフレームは機器やOSがすべて各メーカーの独自仕様。オープン化とはUnixやLinux、Windwsなど標準化された環境で構築されたシステムのこと。柔軟性が非常に高くなります。
最近になってようやく「そろそろ我が社もオープン化を」なんて企業が増えてきた印象です。海外に目を移すと、銀行のシステムだってオープン環境で構築されています。というかクラウドが全盛。日本の企業って、どれだけ遅れてんだって感じてしまいます。
国もこのような状況に危惧を抱いています。「2025年の崖」という言葉があります。2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」に登場する言葉。
先に上げた古いメインフレームは、「レガシーシステム」です。そうしたレガシーシステムを使用し続けた場合、システムの維持コストに予算の多くを奪われ、成長のための投資が滞り、企業の競争力の低下をもたらします。その結果、2025年から年間で12兆円もの経済損失が発生すると予測されているのです。
2025年って、もう目の前です。メインフレームがこれまでずっと使用されてきたのは、長年使用してきた信頼性もその理由にあるのでしょう。ただ、使い続ける限り、いずれ「負け」が訪れます。
大抵のメインフレームは、情報をデータとして吐き出すよりは、帳票として紙に出力するのが主になります。大昔に設計されたので当然ですよね。日本の紙文化が根強いのも、これが原因の一つなのかもしれません。
まとめ
地域金融機関の9割で、個人のメールアドレスが無いというニュースから、日本企業のDXについて考えてきました。
なんだか「時間」や「効率」を重要視しない姿勢が見えてきます。
個人的にはなるべく不要な作業は省きたいのですが、社内で明らかに使われていない書類の添付を省こうとしたところ、「ルールだろ」と怒られてしまいました。
日本人は真面目なのか、ルールは絶対であるだけでなく、なかなか変えようとしません。ルールは状況に合わせて適宜変えていったり、不要であれば無くしていくべきものであると考えますが、ドンドン増えはしても無くなることはほとんどありません。
それゆえ、「明らかにおかしいよな」なんてことも、ルールだし「こういうもの」として惰性的に続けてしまうのです。古いやり方をずっと続けているのも、こんなことが理由なのかもしれません。
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