昨今よく聞くワードといえば「DX」です。デジタルトランスフォーメーションの略ですね。
コロナ禍の影響を受けて、これまでデジタルへの投資に腰の重かった企業や自治体が一気に動き始めた印象です。
今後あらゆる業務がデジタル化され、紙の文化は消えてゆくのでしょう。
自分の仕事においても、IT関連のサービスを提案する機会が多くなってきました。ちなみにうちの会社は製造業です。そんななかで感じるのが、システムを自社で開発できてしまう企業が強いよなということ。
新たにシステムを導入する場合、要件をシステムベンダーに伝えて、あとは丸投げになるのが一般的。しかし、それじゃあ今後ヤバいよなと感じてしまいます。何でもアウトソーシングすることが流行っていますが、システムに関しては自社の根幹に関わるところなので、できるだけ「自社」にこだわるべきであると考えます。そして、それができる企業が強いのです。
システム関連は素人ですが、日々の営業活動で多少は絡む中で感じたことを書いてみたいと思います。
システムはなるべく自社開発すべき?そう考えた理由
冒頭でも書きましたが、システムは自社内で開発するのがもっともいいのではと考えています。IT系の企業ならそもそもそれが本業ですから問題ないでしょうけど、製造業やサービス業などあくまでもシステムは本業を円滑に進めるための道具という位置付けの場合、情報システム部はあってもシステムを一から開発できるような体制などそもそも持っていないことが多いです。
もちろんこれまではそれでも問題ありませんでした。しかし今後はDXの時代。ITを用いて顧客の利便性を追求したり、様々な情報を有効活用することが必須となります。そうでないと生き残っていけなくなるでしょう。
コロナ禍で大手の旅行会社が非常に苦しい立場に追い込まれています。JTBの2021年3月期決算では、1,052億円という巨額の赤字となってしまいました。
実は大手旅行会社の苦境は、コロナ前から始まっていました。大手旅行会社は店舗での取り扱いがメインであり、どうしてもネットでの取り扱いが遅れていました。そうこうしているうちに楽天トラベルや一休.comといった「OTA(Online Travel Agent)」が取り扱い数を伸ばし、大手旅行会社の顧客を奪っていったのです。例えばJTBは、るるぶトラベルでネット販売も展開していますが、OTAの後塵を拝しているのが実情です。ネットへのシフトの遅れが、競争をかなり不利にしたのでした。
このようにDXが遅れると、将来的に会社の存続危機にもつながります。
今後はどんな業界でもデジタルは不可分になります。どの企業においても業務のデジタル化は喫緊の課題です。ただ、業務のデジタル化というと、ITベンダーが販売する既存のソフトウェアやクラウドサービスを自社向けにカスタマイズして導入することが多いです。
しかし、何度も書いた通り自社開発をすべきと考えています。なぜ自社開発がいいのか。その理由は以下の2点に集約できます。
1.スピード感
2.拡張性
1.スピード感
外部のシステムを導入する場合、こんな流れになります。
まず要件を決めて見積りを受領、社内稟議、もしかすると価格交渉、発注、設計、詳細設計、開発、テスト、リリースとかなりの時間を要します。まあ、初期の導入時ならそれなりの時間をかけてもいいでしょう。
問題となるのは、実際に稼働し始めて修正すべき点が出てきた場合。やはり業者に見積もりを依頼して〜といったプロセスが発生し、修正が完了するまで非常に長い時間がかかってしまいます。そして、ちょっとの修正でもかなりの金額がかかってしまうもの。それなら今のままでいいやと我慢を強いられることになるかもしれません。大事なビジネスチャンスを逃してしまう場合も。
社内に開発の人員を擁しているなら、システム関連の費用は大半が人件費ですから、費用面をそれほど気にすることなくスピード感を持って対応することができます。
変化の激しい時代ですから、状況に合わせて素早く自社のシステムを改修できることは、大きなメリットになるのではないでしょうか。
2.拡張性
上記のように外部へ発注する場合、設計段階に入ると仕様変更が難しくなったりします。要件定義の段階できっちりと決めておく必要があります。ただ、最終的なシステムのリリースまでにはかなりの時間がかかりますので、その間に情勢の変化から仕様を変更したくなることもあるはず。しかし、なかなか融通がきかないのが実情です。
このような開発の方法がウォーターフォール型の開発と言います。その対にあたるのがアジャイル型。最近よく耳にするワードでもあります。
アジャイル型の特徴としては、小分けにした機能ごとに設計・開発・テストを実施していくこと。ウォーターフォール型では最初の要件定義の段階で全ての機能をビシッと決める必要があります。一度決めると突き進むしかありません。一方でアジャイル型の場合、途中でも方向転換が可能になります。
アジャイルの場合、途中で色々情勢に合わせて変更した結果、当初思い描いていたものとはまったく異なるシステムが完成することもあります。つまり拡張性と言いますか、自由度が上がるのです。ビジネスではちょっとしたひらめきが大きな結果につながることがあります。そのひらめきを活かせるのもアジャイル開発のメリットでしょう。
自社開発により大きく飛躍した企業
ではシステムを自社で開発し、大きく飛躍することができた企業はどんな企業なのでしょうか。ここでは、IT企業が自社開発するのは当然として、サービス業といった本業はITでない企業の事例をご紹介します。
ウォルマート
ネット通販の巨人といえばAmazonですが、小売の巨人といえばウォルマートです。日本の西友はウォルマートの子会社となっていました。
ウォルマートと言えば、ITシステムの自社開発にこだわってきたのが有名。
一時期はAmazonに押されていましたが、今では逆に脅かす存在に。コロナ禍でも大きく業績を伸ばしました。
その理由はまさにDX。ウォルマートの強みはリアルな店舗を多数展開していること。リアルとデジタルの融合をかなり上手く成し遂げたことが躍進に繋がりました。
密を避けるため決済機能を持ったアプリが浸透。そのアプリでは商品の注文が可能。ピックアップされた商品を店頭で受け取ることができます。宅配する際には、商品在庫や配送員の状況、交通状況、気象などをAIが分析し、効率の良い経路を割り出してくれます。
こうして得られた顧客の購買情報、つまりビッグデータを活用することで、広告事業にも進出しようとしています。
また日本ではユニクロが全商品にICタグをつけていますが、ウォルマートでは2003年頃からICタグを導入し、在庫管理等に用いてきました。先進的な仕組みを早い時期からどんどん取り入れています。
ウォルマートは、売上高で世界最大を誇ります。アマゾンやアップルより、売上高ではウォルマートが断然大きいのです。
トライアルカンパニー
次は日本のスーパー。スーパーセンタートライアルを展開するトライアルカンパニー。創業者はウォルマートの自社開発が強みになっていることに注目し、システムの自社開発にこだわることにしました。
トライアルでもかなりの人数の開発部隊を自社で抱えており、日々システムの改善を繰り返しています。トライアルは自らを流通業ではなく、IT企業として捉えています。
店舗に備え付けたスマートカメラにより、顧客の動きや在庫状況などを把握。得られたデータにより、今後のマーケティング戦略の方向性を検討します。
また、カートにレジ機能を持たせたスマートレジカートも自社開発。長蛇のレジに並ぶ必要がなくなるので、顧客体験の向上だけでなく、レジ打ちの人件費も抑制することができます。
トライアルは年々売り上げを伸ばしています。
パーク24
これまで流通業が続いてきました。次はパーク24。タイムズのブランドで、コインパーキングやレンタカー、カーシェアを展開しています。
実はパーク24も自社開発にこだわる企業の一つ。自分もよく仕事でカーシェアを利用しますが、毎回実感するのがかなり良くできたシステムであること。スマホで予約して、時間になったら窓に取り付けられたリーダーにICカードをかざすことで、車の鍵が開きます。運転中はこれまた自社開発のドライブレコーダーで運転の情報を収集します。こうして集めたビッグデータは自動運転等の開発に活かすことができます。トヨタとカーシェア事業で業務提携するに至りました。
パーク24は、駐車場だけでなくカーシェアでもリーディングカンパニーとなっています。
まとめ
以上システムは自社開発すべしと考えた理由と、自社開発により大きく成長している企業を紹介してきました。
今後はますますDXが浸透していきますから、世の中の動きがますます速くなることが想像できます。そうなると従来型のシステム導入ではスピード感が合わなくなり、アジャイル的に開発している企業が強くなっていくことが予想されます。
と言いつつ自分もシステムを売ることがあるのですが、やはりウォーターフォール型の開発がほとんどです。というかアジャイル型でやっているのを見たことがありません。うちの会社も変わらないとヤバいですね。