近ごろ原油価格が上昇し、それに伴ってガソリン価格が上がっています。原油からガソリンや軽油を精製するので、原油価格が上がると当然ガソリンや軽油の価格に跳ね返ってきます。
地方だと車は必需品。ガソリン価格の上昇は、家計にダイレクトに響きます。21年10月時点で、レギュラーガソリンは1リッター160円を超えていますし、軽油も140円近くまで。ハイオクなんて170円超です。一気に高くなりましたね。
ガソリン価格が上がった際には、必ずと言っていいほど価格に含まれる高い税金が話題にのぼります。「トリガー条項」なんて言葉も良く耳にしますね。
ガソリン価格には、びっくりするくらい大きな割合で税金が含まれており、しかも2重にかかっていたりも。
では実際のところ、ガソリンや軽油にはいくらの税金がかかっているのでしょうか。また、トリガー条項とは?調べてみましたので、解説したいと思います。
ガソリンや軽油にかかる税金って?
ガソリン価格のうち、実は半分とは言えないまでも、それに近いくらいは税金が占めています。結構な割合が税金なんですね。
ガソリンや軽油にかかるのは、一般的にガソリン税と呼ばれる揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税などがあり、それらに加えて消費税もかかります。
また、ガソリンと軽油で、かかってくる税金が異なりますし、消費税の掛け方も多少異なります。ガソリンと軽油それぞれ、具体的にいくらの税金がかかるのか、詳しく解説しましょう。
ガソリンにかかる税金は?
まずはガソリンにかかる税金から。ガソリンには以下の税金がかけられています。
・揮発油税
・地方揮発油税
・石油石炭税
・消費税
結構たくさんの税金がかけられていますね。
では実際のところ、どれだけの金額なのでしょうか。
・揮発油税:48.6円
・地方揮発油税:5.2円
・石油石炭税:2.8円
・消費税:10%
揮発油税と地方揮発油税を合わせて、一般的に「ガソリン税」と呼ばれます。
法律上は、1キロリットルごとの税率となり、揮発油税であれば、1キロリットルあたり48,600円となります。1リットルつまり1/1000すれば、48.6円です。
実はこの税率は本来の税率ではありません。本来は、1キロリットルあたり24,300円。現状では、暫定税率(特例税率)24,300円が上乗せされて48,600円。ちょうど倍になっていますね。
地方揮発油税も暫定税率が適用されており、本来は1キロリットルあたり4,400円。つまり1リットルで4.4円。0.8円上乗せされ、5.2円に上がっています。
石油石炭税はあまり聞き慣れないですよね。揮発油税に比べたら少額なので、あまり目立たないのかも。石油や石炭にかけられる税金で、1キロリットルあたり2.8円です。これも地球温暖化対策の名目で、徐々に引き上げられています。
ガソリンの場合、これらの税金と本体価格に対して、消費税がかけられます。そう、税金にも消費税がかかっているのです。
軽油にかかる税金は?
軽油とガソリンでは、税金の種類が異なります。ガソリンは揮発油税であるのに対し、軽油は軽油引取税が課税されます。
それぞれの税が徴収されるタイミングも異なります。揮発油税は製油所から卸されるタイミングで課税され、販売するガソリンスタンドから見ると、揮発油税が含まれた価格が仕入れ価格となります。
一方で軽油取引税は、ガソリンスタンドから販売された時点で発生します。消費税と似た仕組みですね。スタンドが徴収し、税金を納めます。
後で詳しく解説しますが、この課税タイミングの違いにより、消費税のかかり方もガソリンと軽油で違ってきます。
・軽油引取税
・石油石炭税
・消費税
軽油の場合、これら3つの税金が含まれています。ガソリンい比べると少ないですね。それぞれの税額は以下の通りです。
・軽油引取税:32.1円
・石油石炭税:2.8円
・消費税:10%
軽油引取税も揮発油税と同様に暫定税率(特例税率)が適用されています。本来の税率は、1キロリットルあたり15,000円です。1リットルだと15円。現在は1キロリットルあたり32,100円の税率。本来の税率から倍以上になっていますね。
石油石炭税は、ガソリンと同様に2.8円かけられます。
消費税は、本体価格と石油石炭税の部分に10%かかります。ガソリンの場合、揮発油税も含めて消費税がかかっていましたが、軽油引取税にはかかりません。
消費税による税の2重課税について
ガソリンにかかる税金が大き過ぎると、度々話題になります。原油価格が上昇するたびに、出てきますよね。
上に書いた税率を見れば、確かに大きな税金がかかっていることが分かります。ガソリンだと、1リットルの価格のうち、揮発油税と石油石炭税56.6円に消費税10%をかけて、62.26円が税金なのです。
ここであれっ?思いませんか。56.6円というのは税金のはず。税金にさらに消費税がかかるの?
そうなんです。ガソリンには揮発油税、地方揮発油税、石油石炭税といった税金がかけられているのに、さらにそこに消費税がかかります。税に税をかけている状態。ガソリンの2重課税問題として、度々議論の俎上に上っています。
軽油の場合は、異なります。石油石炭税にはガソリンと同様に課税されますが、軽油引取税に消費税がかかることはありません。この違いは、税金が発生するタイミングの違いによるものです。
揮発油税や石油石炭税は、精製所から出荷された段階で課税されており、ガソリンスタンドの仕入れ値に含まれています。スタンドではその仕入れ値に利益を乗せて販売します。消費税は売上額に10%課せられますから、結果的に揮発油税などの税金にさらに消費税がかかることになるのです。
一方で、軽油引取税は消費税と同様に、スタンドでの販売時にかかる税金です。消費税と軽油引取税は同時に発生するイメージです。それぞれ並行して課税されるのであり、軽油引取税に消費税は上乗せされません。
トリガー条項とは?
原油価格が上昇する度に聞くワードが「トリガー条項」。ガソリン価格が高騰した際に、税率を下げる施策です。
どうやって価格を下げるの?発動条件は?いくら下がる?
そもそも「トリガー条項」ってなんなのでしょうか。
ガソリンは生活に必須のエネルギーです。特に地方は車がないと生活できませんから、ガソリン価格の上昇は家計に大きなダメージを与えることになります。配送など車を多用する企業にとっても厳しいですよね。
しかし、ガソリンや軽油のもととなる原油は、さまざまな要因により価格が変動します。紛争が発生した時だけでなく、原油は市場で取引されていますから、マネーゲームによって上がることもあるでしょう。また、円安になると、海外から仕入れてくる価格が上昇することになります。
ガソリン価格が大きく高騰した場合、国民生活を守るために価格を下げるのが「トリガー条項」です。
具体的に言えば、ガソリンの平均価格が3ヶ月連続で160円を上回った場合に、揮発油税と軽油引取税の暫定税率を停止します。本来の税率に戻すことによって、ガソリンや軽油の価格を下げるのです。
逆にガソリンの平均価格が3ヶ月連続で130円を下回った際には、暫定税率が復活します。
ガソリンで言えばこのようになります。現状では下記の税金がかかっています。上でも書きましたが、おさらいを。
・揮発油税:本則税率24.3円+暫定税率24.3円=48.6円
・地方揮発油税:本則税率4.4円+暫定税率0.8円=5.2円
・合計:本則税率28.7円+暫定税率25.1円=53.8円
トリガー条項が発動されると、暫定税率分の25.1円が停止され、ガソリン価格が下がります。厳密に言えば、この25.1円にも消費税がかかっているので、27.61円下がりますね。
軽油も同様に暫定部分が停止されます。本来の税率だと15円。これに17.1円上乗せされて32.1円の税率となっています。上乗せ分の17.1円が下がることになります。上でも解説した通り、軽油引取税には消費税はかかりませんから、ちょうど暫定分の17.1円の引き下げです。
仕組みはあるが、現在は使えない。
実はこのトリガー条項はすでに法律で定められています。2010年の民主党政権時に、原油価格の高騰から国民生活を守るために定められました。
ところが翌年に東日本大震災が発生したことにより、復興財源確保のため適用が停止されています。
いつまで停止されているかというと、「別に法律で定める日までの間」です。要するに、国会審議を経てトリガー条項を発動可能にするための法律を定めなければならず、トリガー条項の復活はなかなかハードルが高そうです。
トリガー条項は復活する?
トリガー条項を発動するには、先に書いた通り法律で定める必要があります。
揮発油税の令和3年度の税収は、2兆700億円です。思ったより大きいですよね。このうち半分は、暫定税率。つまり暫定税率を1年間停止すると、1兆円税収が下がってしまうのです。これには財務省の抵抗が大きそうですよね。
それに、EVやHVなどの低燃費車の普及により、将来的に揮発油税の税収は下がる見込みです。
なかなかトリガー条項を復活させる議論にはならないかもしれません。
また、昨今の温暖化への関心の高まりも関係しそうです。ガソリン価格を下げるということは、より化石燃料であるガソリンの消費を促すことになります。昨今のトレンドという面からも、難しいかもしれませんね。
まとめ
我が家は広島にあり、市内の中心部であればギリギリ車がなくても生活できますが、基本的には車社会です。
我が家の車は軽油ですので、ガソリンよりは多少燃料費は安くなりますが、原油価格が上昇すればガソリンと同じように小売価格が上がっていきます。
ちょっと前まで110円くらいだったものが、今では140円近くまで上昇しています。結構な上昇幅ですよね。
こんな状態になると、決まって巻き起こるのが、ガソリンの税金が高過ぎるという話です。ということで、実際にどれだけの税金がかかっているのか調べてみることにしました。
こうして見ると、かなり高額な税金がかかっていることが分かりますよね。原油価格の高騰にともなってガソリン価格が高騰した際に、税額を下げるトリガー条項はかなり有効な施策なのではと思います。是非復活してもらいたいものですよね。