何やらこれまでの対策では意味がない模様。
自動車の盗難はイタチごっこであり、イモビライザーの装備が当たり前となった今や、もはやイモビは盗難を防ぐ手段ではありません。「イモビカッター」や「リレーアタック」など新たな盗難の方法が開発され、自動車の盗難は減りつつはあるものの無くなってはいません。
そして、さらに新たな手口が登場したらしい。それは「CANインベーダー」。言うなれば車のコンピューターをハッキングして盗むようなもの。どんどん新しい手口が登場します。
このCANインベーダー、プラドがやばいらしいのです。この手口によって、トヨタの高級車がことごとく盗まれています。対抗する手段はあるのでしょうか。考えてみたいと思います。
兵庫県警がCANインベーダーを用いた窃盗団を摘発
21年8月末あたりに、このようなニュースを目にしました。
兵庫、埼玉、千葉の3県警が「CANインベーダー」を用いて高級車を200台以上盗んだとして、男5人を窃盗容疑で逮捕したとのこと。被害総額は10億円以上にものぼるそうです。
このニュースが注目を集めたのが、CANインベーダーを用いた盗難の初の摘発であったこと。このニュースで初めて「CANインベーダー」なるものを知りました。
どうも専用の機器があるようで、それを使用すると簡単に盗めるようなのです。レクサスでもいとも簡単に盗めるので、犯人はレクサスを中心に盗難をしていました。
また、名古屋の方でも、CANインベーダーと見られるレクサスLXやランドクルーザーの盗難被害が多発しています。プラドばかり狙われた事例もあるようです。
CANインベーダーとは?
CANインベーダーってどういう方法なのでしょうか。リレーアタックはキーをアルミの缶などに入れることで電波を遮断し、盗難を防ぐことができました。しかし、CANインベーダー自体は防ぐことは難しいと言われています。
そもそもCANとは?
2021年の初頭から話題になっていたのが、半導体の不足。世界的な需要に対して、供給が追いついていないのです。半導体不足は自動車業界にも影響を与えています。
半導体というとスマホやPC、家電に大きく関わっていそうですが、自動車はどうして?
実は自動車は半導体の塊。自動車には頭脳となるECUがたくさん積まれており、ナビといった電子機器だけでなく、エンジンや車輪の回転数なども多数のセンサーを介して電子的に制御されています。動力自体は内燃機関ではありますが、実はコンピューターの塊なのです。
自動車の制御システムは大変複雑化しており、何か不具合があってもどこが故障しているのか非常に分かりづらくなっています。
そこでECUには不具合などの自己診断機能が備え付けられています。この自己診断機能により、メーターのところにチェックランプを発したり、ディーラーで専用の機器を繋ぐことで、不具合箇所を特定することができます。
この自己診断機能は「OBDⅡ(オン・ボード・ダイアグノーシス・セカンド・ジェネレーション)」と呼ばれます。Ⅱがついているように、かつては「OBD」も存在しました。しかしOBDは各社によって規格がバラバラであったため、OBDⅡで統一化が図られました。
このOBDⅡは、車の状態を把握するために、車の各センサーや機能と通信しています。まさに車の脳と言えるようなもの。この脳と通信する神経にあたるものが「CAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)」です。CANは自動車のデバイス間同士が情報をやりとりするための通信規格です。
CANのネットワークに入り込んで、車を制御する
CANのネットワークは車中に張り巡らされており、ヘッドライトも繋がっています。現在のヘッドライトは、自動的にヘイビームからロービームへと切り替わったり、ヘッドライトユニットの中にも頭脳があります。CANと通じてOBDⅡへ繋がっています。
なぜヘッドライトかと言うと、それは外部からアクセスしやすいから。なんとプラドの場合、フロントタイヤの内張を剥がすことで、アクセスできてしまうそうです。
ヘッドライト付近のCANに、専用の機器を繋いでネットワークに侵入します。ニュースの映像で見たところ、まるでモバイルバッテリーのような機器でした。つまり、かなり小型で持ち運びが可能です。
CANからOBDⅡを制御し、ドアのロックを解除したり、エンジンをかけたりすることができます。この機器があれば、結構簡単に盗めてしまうようです。恐ろしいですね。
CANインベーダーによる盗難の被害を防ぐには?
構造的にCANインベーダー自体の被害を防ぐのは難しいでしょう。コンピュータの世界で言えば、OSのセキュリティホールをついてハッキングされるようなもので、メーカーに何らかの対策を施してもらわなければなりません。とは言え、すでに販売中の車で対策するのは難しいのではないでしょうか。
やはり、従来からあるような基本的な盗難対策をするしかありません。自動車盗に対する対策といえば、以下のものがあげられます。
・社外カーセキュリティ
・ハンドルロック等物理的な対策
・車両保険
社外カーセキュリティ
代表的なものと言えば、クリフォードやバイパー、ゴルゴなどのシリーズです。セキュリティ専門のショップで取り付けてもらいます。
不正なドアの開閉や、揺れなどでサイレンを鳴らすだけでなく、純正とは別にイモビライザー機能を追加することができます。この社外セキュリティのイモビライザーを解除しなければ、エンジンがかからない仕組みです。商品によっては、2系統のイモビライザーが装備されているものもあり、より車を守る能力が高くなります。
社外セキュリティの難点としては、それなりに費用がかかること。10万円代から、高いものだと数十万円まで。
社外セキュリティを導入するかどうかは、車種と住んでいる地域によると思います。関東や東海地方でランクル(プラドじゃない兄貴の方)に乗るなら、必須と言えるでしょう。
車の盗難がそれほど発生していない地域であれば、もちろんつけるに越した事はないのですが、そこまでは無くてもいいのではと考えます。
ハンドルロック、タイヤロックなど
昔ながらのアナログな対策です。アナログだからこそ、普遍的な対策であるとも言えます。
CANインベーダー対策には、こうした物理的な対策が有効でしょう。自分個人でも実施しています。
こうした対策は、比較的低価格で導入できるほか、見た目のインパクトもあります。窃盗犯は目立つことを嫌います。このような金属でてきた物理的なロックを無理やり外すには、どうしても大きな音が出てしまいますし、時間がかかってしまいます。CANインベーダーによりエンジンがかけられたとしても、走行できるまでにもう一段のハードルがあるので、犯行への抑止力が見込まれます。
ハンドルロックだけでなく、タイヤロックもすれば、さらに効果的でしょう。ただし、面倒ですが。
その他、ブレーキを踏めなくするものや、シフトレバーを動かせなくするものがあります。複数組み合わせることで、より高い防犯効果が期待できます。
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車両保険
最終的には保険も大切。社外セキュリティや、物理的なアイテムを取り入れても、盗まれる時は盗まれます。どんなものでも、完璧に盗難を防ぐのは難しいです。
盗まれやすい車種でれば、車両保険は必須でしょう。しかし、ランドクルーザーやレクサスLXといった極めて盗まれやすい車種の場合、保険料がかなり上がってしまいます。
幸いプラドだと、車両保険をかけても大幅に上昇することはありませんでした。保険会社にもよりますが。
一度盗まれた車両は、すぐに海外へと運ばれて行くと言われています。発見されるケースは稀です。盗まれたら泣き寝入り。そうならないためにも、最終手段として車両保険は大切です。
まとめ
リレーアタックが話題になったと思ったら、新たな盗難の手口が出てきました。困りものですよね。
リレーアタック対策として、家では電波を遮断する入れ物にキーを保管していますが、CANインベーダー相手だと意味をなさない対策になります。
結局のところ、昔ながらのちょっと面倒な対策がいいのかもしれません。我が家の車にもハンドルロック等は取り付けています。確かにつけたり外したりが面倒ですが、いくら車両保険をかけているとはいえ、盗まれたら悔しいですし。
何よりメーカーで盗まれない車を作って欲しいですよね。いや、いくら新たな盗難対策を取り入れても、いずれ破られてしまうのでしょう。
自動車の盗難は無くなって欲しいですが、決して無くなる事はないのでしょう。それなら、なるべくターゲットから外れるよう、抑止力を高める方法が効果的だと思います。つまり、ハンドルロックやタイヤロックなどの伝統的な方法ですね。