単身赴任の帰省費用。毎週は出ないが、月に一回は会社から支給されることが多いでしょう。うちの会社もそうです。月に一回は往復の帰省費用が支給されます。
しかし、今は子供が小さいこと、そしてそもそも家族と幸せに過ごすために仕事をしているようなものであり、月に一回しか家に帰れないなんて仕事を続ける意味がありません。
ということで、毎週末家に帰っています。家のある広島と、単身赴任先である大阪の二拠点生活。月曜か金曜にテレワークを入れることで、思ったより家にいる時間が長く取れています。
ただ、広島と大阪間を移動する費用は重くのし掛かります。普通に新幹線に乗車すると、かなりの負担になりますので、新幹線の安い切符や高速バスなどを活用して費用を抑えています。
さて、この帰省費用。経費で落ちないのでしょうか。仕事場と家の間の交通費ですから、経費になりそうです。まったくの持ち出しであるこの費用。いくらかでも税金が戻ってきたら儲けものです。
ということで、帰省費用が経費になるのか調べてみました。
現在帰省にどれくらいのお金がかかっている?
毎週末の広島大阪間の往復。月に4往復です。つまり広島大阪間を8回移動することになります。
普通に新幹線で移動すると、8万円かかることになります。別に望んで単身赴任をしている訳ではないので、そんな負担はありえないですよね。このうち2回は会社から交通費が支給されます。
月に6回の移動つまり3往復が自己負担となります。とは言っても約6万円。お財布にとって痛すぎです。
そこで負担を抑えるべく、新幹線の「直前割」や高速バスを利用しています。月に8回の移動のうち、2回は新幹線ののぞみを利用、それ以外は直前割や高速バスを利用して費用を抑えています。
そのあたりはこちらの記事をご覧ください。
新幹線の直前割だと片道6,200円で移動できます。高速バスだと4,000円前後。すべてを直前割とした場合、37,200円の自己負担です。年間にすると446,400円。なるべく費用を抑えたとはいえ、年間にすると結構な負担ですよね。
実は2022年2月末で直前割が終わってしまいました。現在は日本旅行のバリ得を利用しています。運賃は少し高くなって、片道6,800円です。
経費にはなるが、ハードルが高い!特定支出控除と給与所得控除。
では、その帰省のための移動費用。経費になるのでしょうか。
結論から。経費にはなります。ただし、かなりハードルが高いです。恐らくほとんどの方は該当しないのでは?
このような単身赴任の帰省費用は、「特定支出」にあたります。一定額を超えると、確定申告をすることで「特定支出控除」を受けることができます。
何度も言いますが、この「特定支出控除」を受けるハードルはかなり高いです。その理由は、給与所得控除にあります。
特定支出控除とは?
サラリーマンが会社の業務に必要なことに対して自腹で負担した場合に、税金を控除することができる制度です。
特定支出のうち、基準金額を超える金額を、所得控除後の所得から差し引くことができます。
では、どんなことが特定支出に該当するのでしょうか。
下記は国税庁のホームページより抜粋しました。次の1〜7の支出が特定支出にあたります。
1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2 勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)
3 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
4 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
5 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となります。6 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
7 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)出典:国税庁ホームページより
このような仕事に必要な出費が特定支出に該当します。要するに、
・「通勤費」
・「出張費」
・「転勤時の引越費用」
・「研修や資格取得費」
・「単身赴任の帰省費用」
・「その他書籍やスーツ、交際費など」
が該当し、これらを自己負担した金額です。例えば通勤費は会社から必要額を支給されているはずなので、特定支出にはなりません。
これらの中で自分で負担するのって、研修や資格費、単身赴任、本やスーツ代くらいでしょう。
会社が研修費の一部を補助してくれる場合、補助分を超える分が特定支出に含めることができます。
特定支出控除を受けられる金額のハードルが高い
これまで何度もハードルが高いと書いてきましたが、具体的には控除を受けられる支出額がかなり高いのです。
また、上記の支出って、会社から支給されたり補助されたりすることも多いので、まったくの自己負担は結構少なくなるのでは?
その基準金額は以下の通り。
特定支出控除の基準金額 = 給与所得控除額 × 1/2
給与所得控除の半分が、特定支出控除の基準金額です。この基準額を超える分が、控除の対象となります。5万円超えたら、5万円を所得金額から差し引いて税額を計算します。
しかし、この給与所得控除額がかなり大きいのです。給与所得控除とは、税額を計算する上で給与額から一定額を差し引くことができる制度のこと。この控除額を引いた残りが給与所得となり、これに税金がかかってきます。
給与所得控除はこのように計算します。国税庁のホームページに掲載されている表を抜粋しました。
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)給与所得控除額 1,625,000円まで 550,000円 1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円 1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円 3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円 6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円 8,500,001円以上 1,950,000円(上限) 出典:国税庁ホームページより
例えば年収が600万円の場合、このように計算します。
6,000,000×0.2+440,000=1,640,000
つまり給与所得控除額は1,640,000円となります。結構控除されるんですね。
そして特定支出控除の基準額は、給与所得控除額の半分でした。
1,640,000÷2=820,000
1,640,000円の半分なので、820,000円です。年収600万円の場合、この820,000円を超えた分が特定支出控除として適用されます。かなりの額を自己負担しなければ、到達しそうにない額です。毎週飛行機で往復するなら控除を受けられそうですが、確定申告をする前に破産しそうですね。
そもそもサラリーマンには給与所得控除がある
このように給与所得控除ではかなり大きな額を控除されていることが分かります。
給与所得控除とはサラリーマンの経費のようなもの。フリーランスや自営業者なら、仕事に必要なものを購入した代金は経費として所得額から差し引くことができます。人によってはこの経費でかなり得をしていることもあるようですね。我々サラリーマンからすると、羨ましく感じることもあります。
サラリーマンの場合は、人数も多いことから一点一点領収書を取っておいて、個別に確定申告することは難しいです。そのため、給与所得控除として一律に控除されています。
勤務に必要なスーツや文房具などの必要経費は、ひとまとめに給与所得控除に含まれている訳です。そして、高額な研修を受けたりたくさんスーツを購入したり、単身赴任による交通費が余計にかかると、給与所得控除には収まりきらない場合があります。そんな時に活用するのが、特定支出控除なのです。
なので、まずは給与所得控除ありきであり、負担が大きくなった時のための特定支出控除です。このように考えると、特定支出控除のハードルが高い理由が分かります。
まとめ
毎週家族のもとに帰るので、毎週交通費がかかっています。多少の交通費より家族と過ごす時間の方が大切なので、二拠点生活を続けていますが、この費用が多少でも軽減できればありがたいですよね。経費として認められるのかどうか調べてみました。
確かに特定支出控除として経費として認められはするのですが、かなり金額的にハードルが高いことが分かりました。そもそもサラリーマンの場合、給与所得控除で大きな控除を受けているため。
残念。税金が戻ってくることはなさそうです。
それより、望まない転勤がなくなって欲しいですよね。