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会社の確定拠出年金をやめた理由。選択型DC(選択制DC)の問題点について

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3年くらい前からうちの会社でも確定拠出年金が導入されています。従業員が掛け金の額を選択して、給与や賞与の一部から拠出します。いわゆる選択型DCというものです。

導入されたのは、毎月の給与ではなく賞与から6か月分をまとめて引かれるタイプのものです。導入当初はせっかく会社が導入したんだしということで、月に1万円分つまり賞与の都度6万円を拠出するよう設定していましたが、今ではやめてしまいました。正確にいうと一度始めるとやめられないので、もっとも少額の拠出額に設定しています。

確定拠出年金なので、老後に向けた資産形成の一環です。出来ることなら続けた方が良さそうです。ところが、すぐにやめてしまいました。今回はその理由についてお伝えしたいと思います。

 

 

 

 

確定拠出年金とは?

 毎月一定額の掛金を出して(拠出して)、それをもとに自分で運用し、将来的に年金として受け取る仕組みです。自分でどの金融商品にするのか決められますので、少しリスクを取って増やそうということも可能です。年金なので原則的に60歳まで引き出せません。

そしてこの確定拠出年金。個人型と企業型があります。個人型が最近話題のiDeCoですね。自分で金融機関を選んで口座を開設し、自分で商品を選んで積み立てます。

一方、企業が従業員の福利厚生として導入するのが企業型確定拠出年金です。基本的には企業が掛け金を負担し、従業員が自分で商品を選んで運用します。さらに企業が負担する掛け金にプラスして、従業員が自らのお金から掛け金を上乗せ可能なマッチング拠出という制度もあります。

いずれの場合も運用益は非課税です。リスクを取って運用し、年金額が倍増していたとしても税金はかかりません。通常の株式投資では20.315%が利益に対して課税されます。数十年の運用後にはかなり大きな利益になっていることも想定できますので、非課税は大きいですよね。

また、掛金も全額所得控除になります。将来の自分のためのお金を積み立てることで、現在の所得税も安くなるのです。お得ですね。

 

選択型DCとは?

 では選択型DCってどういうものなのでしょうか。選択制確定拠出年金ともいいます。企業型確定拠出年金の一つの形態です。上で企業型確定拠出年金は企業が掛け金を負担して従業員が運用すると書きましたが、選択型は従業員の給与の一部を確定拠出年金に拠出します。あくまでも選択制であり、上限まで拠出することもできますし、最小まで減額するなど掛け金も自由に変更できます。

掛け金は、所得税住民税が非課税となります。また掛け金部分は社会保険料を算定する報酬から除外することができます。社会保険料は標準報酬月額をもとに決まりますね。つまり掛け金の分だけ標準報酬月額を減らすことができるのです。この社会保険料の減額は、通常の企業型確定拠出年金では受けられないメリットとなります。

そして企業にもメリットがあります。まず通常の企業型確定拠出年金と違って、掛け金の原資は従業員の給与です。別途負担する必要はありません。厳密に言うと口座管理費は企業負担ですが。そしてなんと言っても大きいのが、社会保険料の負担が減ることです。社会保険料は労使の折半となっています。給与明細に掲載されている社会保険料額って悔しくなるほど高いですよね。折半なのでこれと同じ額を企業も支払っているのです。つまり、選択型DCに従業員が給与の一部を拠出することで社会保険料額が減りますから、会社は余計な負担をすることなく人件費を軽減することができるのです。

 

 

 

選択型DCのメリットとデメリット

 この選択型DC。調べてみるとなんだか微妙な制度であることが分かりました。もちろんメリットもあるのですが、デメリットもあるんですよね。

まずはメリットをあげてみましょう。

 

メリット1:会社が準備してくれるので、事務的な負担がない

イデコなら自分で申込の書類を郵送したりといったちょっと面倒な作業をすべて自分で行わなければなりません。企業型の確定拠出年金であれば事務的なところはすべて会社がやってくれます。従業員はどの商品を選択するか、そしていくら拠出するのかを決めるだけです。

 

メリット2:税制優遇がある

拠出した掛け金は全額非課税になります。つまり拠出した分だけ所得税や住民税がかかりません。納める税金が安く済みます。将来に向けた資産形成ができるだけでなく、同時に出費を抑えることができます。数十年といった長期間に渡り付き合っていく制度ですので、減税額だけでもトータルするとかなりの金額になります。

 

 

 

メリット3:社会保険料を減らせ

拠出した分は社会保険料の算定から除外されますので、標準報酬月額を減らすことができます。標準報酬月額を下げることで、社会保険料の負担も軽減することが可能となります。これも長期間となるとかなりの減少額になりそうです。

 

メリット4:自分で商品を選んで運用できる

そもそも確定拠出年金なので、自分で商品を選んで自分の考え方のもと運用することができます。リスクをとって大きく増やせる可能性もありますし、税や社会保険料の軽減のみを目的として、債権といった比較的リスクの少ない商品で運用することも可能です。その組み合わせも可能ですね。

 

ではデメリットは?

 

デメリット1:年金受給額が下がる

ここが一番の問題ですね。標準報酬月額が下がるということは、社会保険料つまり将来の年金のための掛け金を少なくすることを意味します。掛け金が少ないと、当然将来受給できる年金額も下がることになります。

 

デメリット2:各種セーフティネットの受給額が下がる

もし病気になって長期で休職した場合。雇用保険から傷病手当金が支払われます。また、出産した時。育休手当を復職するまで受給できます。そして万が一亡くなってしまった場合。家族には遺族年金が支払われます。

もっと他にもありますが、これらの手当の支給額は標準報酬月額をもとに算出されます。つまり標準報酬月額が下がることで、もしものときの手当も減ってしまうことになります。

 

 

 

デメリット3:60歳まで使えない

これはイデコなんかも同様ですが、年金なので当然60歳までは手をつけられません。なので掛け金を多くし過ぎても今の生活が苦しくなります。選択型では、自由に掛け金を変更することが可能です。ただ事務的な手続きの煩わしさから、年に1回とか2回変更のタイミングを設けていることも多いようです。

 

デメリット4:従業員にとって不利益であるという面も

この制度は、会社が掛け金を負担するのではなく、本来もらえるはずの給与の一部を減額して確定拠出年金に充てるということになります。結局は年金の掛け金として将来の自分のお金になるんだからいいじゃないかとは思いますが、給与が減るという形になりますから、上であげたように将来の年金額や各種セーフティネットの受給額の減少にも繋がるのです。

同じく従業員が掛け金を拠出するもので、マッチング拠出というものがあります。こちらは基本的に企業が掛け金を負担しますが、もっと貯めたいと従業員が考えた際に、上乗せで拠出することができる仕組みです。上乗せ分は所得控除され、税金が安くなります。社会保険料の負担は変わりませんので、将来の年金額が減ることはありません。同じく従業員が拠出する仕組みではありますが、会社の掛け金の負担の有無など似て非なる制度なのです。

 

デメリット5:デメリットをしっかり伝えられない場合も

この年金額や各種手当の額が減ってしまうということについて、うちの会社でもあまり詳しく説明されてなかったと思います。

制度が導入される際に信託銀行の担当者がやってきて説明会がありました。ポートフォリオなど運用に関する考え方、税制面のメリットについての説明はありましたが、年金受給額の減少についてはほとんど言及が無かったと思います。どこかに小さく書いてあるのかもしれませんが。

この選択型DCってどちらかというと、人件費を抑制したい会社側に有利な制度なんですね。掛け金は従業員の給与からですし、掛け金の分社会保険料を抑制することができます。導入することで、人件費が削れるのです。なのでなるべく多くの従業員が制度を利用して、なるべく多くの掛け金を拠出してくれた方がありがたいのです。そうなるとデメリットについてはなるべく触れずに隠したいというインセンティブが働くことになります。

 

やめてしまった理由は? 

選択型DCについてのメリットとデメリットを考えてきました。もちろん上にあげたデメリットも理由ではありますが、他にも積み立てを止めた理由があります。色々考えた上でなぜやめたのか、理由を述べたいと思います。

 

 

 

すでに住宅ローン減税を受けている

所得税については、住宅ローン減税により全額戻ってきている状態なので、軽減のメリットがありません。住民税については、住宅ローン減税で戻る額には上限がありますので、住民税が全額戻ってきている訳ではありません。なので住民税については軽減のメリットがあります。

 

商品ラインナップが少ない

会社が大手の信託銀行に委託する形で導入します。商品選択をわかりやすくした結果なのかどうか分かりませんが、商品の選択肢がかなり少ないのです。

投資先について色々と勉強した結果、米国株をメインに運用すべきであるという結論に至りました。S&P500が対象の投資信託があればよいのですが、会社の確定拠出年金の商品にはもちろんそんなものはありません。あまりリスクを取れないような商品ラインナップになっています。

それに大手の信託銀行に委託しますので、それなりに高コストな商品となります。インデックスファンドですので、めちゃくちゃ高い訳ではありませんが、ネットであるような信託報酬が0.1%を切るような商品はもちろんありません。

 

将来の年金額が減る

せっかく確定拠出年金として積み立てるのに、それにより厚生年金の受給額が減ってしまいます。もちろんその分今の手取り額は増えますので、これは個人の考え方によりますね。今を取るか先を取るか。

 

一度に半年分の拠出は結構痛い

うちの会社で導入されたのは、賞与から拠出するタイプのものです。毎月の給与からは引かれませんが、半年分をまとめてボーナスから抜かれます。

例えば月に2万円を積み立てる設定にすると、ボーナスごとに12万円引かれることになります。せっかくのボーナスなのに、そこから一気に12万無くなると結構悲しいですね。しかも会社の業績が落ちてボーナスが大幅に少なくなるようかことがあるとどうなるのでしょうか。ボーナスが出ないなんてこともありえますよね。出たとしても、確定拠出年金を拠出した後だとほとんど残らない、というようなとんでもなく悲しい事態も考えられます。この賞与DCを導入したということは、どんな時でも会社としては従業員にボーナスを出すのだという決意と捉えても問題ないのでしょうか。

実は賞与のDCを導入するのは、裏にカラクリがあるのです。会社としては、より確実に人件費を削りたいという思惑があります。

どういうことかというと、社会保険料のもととなる標準報酬月額は4月5月6月の3か月間の給与の平均をもとに決められます。ミソは6月が入っていることです。そう、ボーナス月です。ボーナスも含めた平均となります。

標準報酬月額は、等級によって段階が区切られています。一つの等級では何円〜何円と幅があります。月々の給与から拠出する場合、額が小さいとその幅の中に収まってしまい、等級が変わらないかもしれません。しかし賞与で拠出する場合は半年分つまり6回分を一気に引きますので、等級が下がる可能性が高くなります。毎月の拠出であれば3か月分のところ、賞与だと4〜6月の標準報酬月額の算定期間の間に6か月分拠出したことになるからです。

 

60歳まで使えないので、つみたてNISAを優先

賞与DCに限らずイデコでもそうですが、年金としての運用なので60歳まではそのお金は使うことができません。イデコと似た仕組みでつみたてNISAがあります。年間40万円、月にすると33,333円の積み立て枠があり、現状はフルで投資しています。つみたてNISAの場合は途中で解約することも可能で、いざという時にはすぐに現金化可能です。予算は限られますので、つみたてNISAを優先したいと考えました。

 

まとめ

 企業が掛け金を負担する企業型確定拠出年金ならやめる理由もないのですが、この選択型DC(選択制DC)はどちらかと言うと会社にとって都合の良い制度であることが分かりました。口座の管理費の負担はありますが、そのほかの負担は特になく、人件費を抑えることができます。しかも従業員に対しては、将来のためであったり税制面でのメリットを強調して、裏の目的は見えにくいのです。

自分は個人的な考えのもとやめることにしましたが、税金や社会保険料の負担減のメリットがあるのは事実ですし、十分将来に備えた資産形成も可能です。自身のニーズにマッチすれば、会社と従業員でウィンウィンになれる制度です。あくまでも自分のニーズに合わなかったというだけですので、そこまで悪い制度かというとそんなことはありません。ただ、会社が導入するということは、従業員ほぼすべてが半強制的に制度を使用しなければならなくなります。選択制なのでもちろん加入するかどうかは選べるのですが、自分だけは加入しないなんてなかなか言えないですよね。

もっと各個人が自由に選択できればいいと思います。そして個人は個人でもっとお金のことを知っておいた方が良さそうです。