先日「逃げ恥」の新春スペシャルが放映されました。何度も再放送が放映され、その度に見てしまう逃げ恥。当然新春スペシャルは見逃せません。うちの子は、ドラマ放映が終わった2017年生まれなのに、星野源を見ると「平匡さん!」と喜んでいます。
新春スペシャルでは、平匡さんとみくりさんに赤ちゃんが生まれる様子が描かれています。ちょうど数年前に自分も経験してきたことであり、懐かしい想いを感じながら視聴しました。
逃げ恥の特徴と言えば、様々な社会問題が取り入れられていること。
新春スペシャルでも、様々な社会問題が散りばめられていました。選択的夫婦別姓から、LGBT、男性の育休取得、無痛分娩、粉ミルクでの育児などなど。
コロナ禍が世の中を襲う様子も描かれています。現在進行形で自分たちが経験していることであり、多くの方が自分事としてこのドラマを受け止めたのではないでしょうか。
そんな逃げ恥の中で、一つ注目した点があります。それは、ドラマ作中における自動車の描かれ方。
舞台は横浜市。主人公はITエンジニア。自動車とは縁が無さそうです。平匡さんは免許を取得していないようで、当然自家用車も保有していません。どちらかというと、車なんていらないという立場でしょう。
それでも、自動車が登場する場面でオッと思うことがあったり、車に対する作り手の想いみたいなのが伝わってきたのです。自動車に焦点を当てて、逃げ恥の新春スペシャルを語りたいと思います。
- まず逃げ恥新春スペシャルで描かれた車が活躍するシーンを
- 自動車でなければならなかった移動手段
- 平匡さんはこれから免許を取得するのでは?と感じた逃げ恥新春スペシャル
- 商業的な意味合いも?マーケティング手段としての逃げ恥
- まとめ
まず逃げ恥新春スペシャルで描かれた車が活躍するシーンを
上でも書いたように、舞台は横浜市ですし職業はITエンジニア。年齢的にも、車なんて必要ないと考える世代でもあります。当然自動車は所有していませんし、免許もないでしょう。連ドラの温泉旅館に行く回では、レンタカーではなくローカル線に乗車していました。
唯一所有しているのが、百合ちゃん。みくりさんの伯母です。アラフィフの化粧品会社で働くバリバリのキャリアウーマン。ちょうどバブル世代であり、自動車には何らかの憧れのような感情を持った世代でもあります。ドラマの中でも、百合ちゃんの黄色い日産ジュークは何度か登場しました。自動車の楽しさを知っている世代です。
助手席の風見さんに対して「車はいいものよ。思ったより遠くに行けるから」というような会話をするシーンがあります。何気無く深い意味を感じずに見ていましたが、なんとそれが今回の新春スペシャルに繋がる伏線となっていたのです。
新春スペシャルで描かれた自動車に乗るシーンは2つ。どちらもコロナ禍における場面でした。
まず、みくりさんが両親の住む千葉の館山にコロナ疎開をする場面。ちなみに連ドラでは、館山に地方移住するシーンも描かれています。連ドラは2016年に放送されており、もちろんコロナなんて想像もできないような頃の作品です。この館山移住がなければ、コロナ疎開のシーンも無い訳で、よく考えたらすごいですよね。館山行きを決めたみくりさんを栃男さん(みくりの父)が黄色の軽ワゴンで迎えに来ます。抱っこ紐を身につけたみくりさんが乗り込み、平匡さんが見送ります。
そして緊急事態宣言の最中、平匡さんが風見さんの運転する車でPCを館山に届けるシーン。連ドラで百合ちゃんの助手席に乗る風見さんは、実は免許を取得していませんでした。それが新春スペシャルでは、免許を取得し自動車まで所有しているのです。
一度百合ちゃんと付き合った風見さん。自動車に対する考え方について、百合ちゃんの影響を受けているのでした。助手席の平匡さんが風見さんの自動車所有について言及した場面で、「思ったより遠くに行けるから」と百合ちゃんと同じようなことを言います。
自動車でなければならなかった移動手段
みくりの両親が自家用車を持っているのは、当然と言えば当然です。田舎に住んでいるのであり、自動車が無ければ生活できません。必要最低限の移動手段として、低コストの軽自動車を選んだのでしょう。
しかし乗っているのは、軽ワゴン。ダイハツのタント(違っていたらすみません)です。夫婦二人であれば、同じダイハツのミライースといったもう少し小さなモデルでも良さそうなもの。恐らくちがや(みくりの兄)やみくり達が、帰省した時のことを想定してのチョイスなのでしょう。
緊急事態宣言下において、新生児を連れて、公共交通機関で横浜から館山なんて到底行けません。自動車でのお迎えが、当然の選択肢となります。この時点では、何の違和感も感じませんでした。
問題なのが、風見さんの車。連ドラでの百合ちゃんとの車内の会話から、免許及び自動車所有による伏線回収、そして緊急事態宣言下での移動手段と車コンボが炸裂するのです。
県を跨いだ移動が制限される中、横浜から館山のみくりさんにPCを届けなければなりません。公共交通機関は使用できません。車から降りず誰とも接触しないことを前提に、風見さんの車で館山に向かうのでした。
ドラマの背景としてコロナ禍を描くのであれば、移動手段として車を使用せざるを得ない事情もあったのでしょう。
コロナ禍では、これまでの常識が一変しました。都市部では車のない生活は当たり前になっていましたが、いざ緊急事態宣言が出されると、車がないとどうしようもない状況が訪れたのでした。多くの人と接する機会のある公共交通機関での移動は大きなリスクを伴う一方、一つの個室として移動する自動車は唯一の安全な移動手段となったのです。
平匡さんはこれから免許を取得するのでは?と感じた逃げ恥新春スペシャル
とは言え、風見さんがどうして免許を取得したのか疑問が残ります。もちろん百合ちゃんの影響はあったでしょう。
しかし、館山と違って、横浜市内に住むのであれば公共交通機関で事足りるはず。連ドラ内では、百合ちゃん以外は誰も車を運転していません。車を持つ目的は、生活での必要性でなかったことは確かでしょう。
それに、みくりの実家である館山に行くのであれば、親戚である百合ちゃんにお願いしてもいいはず。どうして、風見さんだったのか。
注目すべきはこの言葉。「思ったよりも遠くに行けるから。」連ドラでは百合ちゃんが話し、スペシャルでは風見さんから飛び出しました。2度もこの言葉が出てくるのです。
意味合いとしては、車の楽しさを伝えるもの。確かに車を持つと、行動範囲が拡大します。それも思うより大きく。
車がもたらす楽しさの恩恵は、自分も実際に体験してきました。入社2年目に無理して5年ローンで新車を購入しました。当時は実家のある大阪市内に住んでおり、それこそ車なんていらない環境でした。
しかし、車があったからこそ、思い出深い20代30代を過ごせたのも事実です。例えば20代後半は登山にハマり、思い立った時に北アルプスまで行けたのも、車があったおかげです。
恐らく実際に車を所有する百合ちゃんを間近で見ることにより、風見さんもその楽しさであったり、人生に有意義な経験をもたらし得ることを実感したのではないでしょうか。
そして、製作側の自動車に対する想いみたいなものも伝わってきます。
近頃は、免許さえ持ってない若い人も多いです。取得費用も高いので、車に乗らないと決めたら、取得する必要もないのでしょう。
想像ではありますが、そうした状況に対するアンチテーゼとして、車の魅力も伝えたかったのではないでしょうか。
風見さんが乗っていたのは、ダイハツのロッキー。ダイハツです。軽ではありませんし、小型SUVでそこそこカッコいい車ではありますが、かなり庶民的な選択です。風見さんが乗る車としては、意外な印象を持ちました。
連ドラの中で、みくりさんが風見さんの家で家事代行のアルバイトをする場面があります。いったいいくらかかってんだというような、まるでモデルルームのような家でした。それなりの収入が予想されます。車は輸入車が選ばれても良さそうなものです。レンジローバーなんかが似合いそうですが。
しかし、自動車の楽しさを伝えるのに、ハードルの高い高価な輸入車に乗る訳にはいきません。それゆえのダイハツロッキーなのでしょう。
館山に行く場面。コロナ禍で緊迫した雰囲気ではありますが、男二人のドライブでなんだか楽しそうです。恐らくこの場面は、百合ちゃんではなく、風見さんでなければならなかったのでしょう。ドライブを楽しそうに見せるために。
そして、みくりさんは平匡さんが館山に来たことを知り、車を探します。電話で平匡さんは、みくりさんに見つけてもらうためこう言います。「赤いロッキーです。かっこいいですよ。」
車に興味なんてなさそうであった平匡さんが、車名まで口にします。これまで車に縁のない生活をしてきた平匡さん。今回のドライブで、コロナ禍における移動手段としての自動車の有用性、そして車があることの楽しさを実感しました。わざわざ車名を口にするのは、車に対しての関心の芽生えとも考えられないでしょうか。
もし次の特番があるのなら、車の所有の是非が話題になるかもしれません。小さな子供を連れての移動は、公共交通機関よりも自家用車が圧倒的に便利です。子育てに自家用車は必要かどうか話し合うシーンが見られるかもしれません。
よくある怪談話のパターンとして、この話を聞いたら夜に霊がやってくる的なものがあります。「思ったより遠くに行けるから。」これも呪いの言葉かもしれません。車を持ちたくなる呪いの言葉。百合ちゃんから風見さん、そして風見さんから平匡さんへと連鎖しているのです。
商業的な意味合いも?マーケティング手段としての逃げ恥
クルマ好きの立場から、つらつらと妄想を書き連ねてきました。上で書いたように、純粋に車の良さを若い世代に伝えたいという意味が込められていて欲しいものですが、まあ商業的なバックグラウンドがあるのでしょう。自動車メーカーは、テレビ広告の上得意先でもあります。
逃げ恥を視聴する層。20代後半から40代前半の比較的若い層であると考えられます。子育てにいそしんでいる世代。車離れが起きつつある層でもありながら、子育てのために車を必要とする層でもあります。また、そこそこ収入が上昇し、趣味などアクティブに活動する層でもあります。
自動車メーカーとしては、今後の売上のためにもドンピシャでアピールしたい層でしょう。逃げ恥は絶好のマーケティング機会なのです。
ドラマ内で、そんな様子を垣間見ることができます。まず栃男さんがみくりさんを横浜まで迎えに来るシーン。
黄色の軽ワゴンに乗り込むみくりさん。抱っこ紐(エルゴベビー)で赤ちゃんを抱えています。これってまさしくスーパーの駐車場で見る光景。夫婦二人っきりで生活する栃男さん夫婦に、どうして黄色の軽ワゴンが必要なのか。みくりさんが所有していてもおかしくないような車です。若いお母さんが乗るような車に、実際に赤ちゃんを抱えたみくりさんが乗ることで、赤ちゃんと一緒=ダイハツタントというイメージを視聴者に刷り込むことを意図したのかもしれません。
風見さんの車で館山に向かう際には、赤いダイハツロッキーが用いられました。トヨタライズと兄弟車です。開発はダイハツ主導で行われ、トヨタにOEM供給されています。5ナンバーサイズの小型SUVで、若い世代の遊び車として最適な車です。ラゲッジ容量は369Lも備えており、今流行りのソロキャンプなら十分な容量です。
男二人のドライブ。PCを届けるという目的ではありましたが、多少楽しいという要素もあったでしょう。そしてその楽しげな感じを増幅させるのに、ボディの赤色が大いに影響したはず。マーケティングという目的のためには、ボディは赤でなければならなかったのです。そして平匡さんの一言「かっこいいですよ。」あの星野源が言うのですから、間違いありません。
また、風見さんが乗っていることも大きな要素でしょう。男前ですし、住んでいる部屋を見るとかなりのこだわりが感じられます。逃げ恥の中でも、他の人とは違うオーラを放っています。そんな風見さんが選んだ車ということも、視聴者に深い印象を与えるのではないでしょうか。あの大谷亮平が乗っているんですから、間違いありません。
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まとめ
車を所有するのなら、輸入車を選びそうな風見さん。そんな風見さんがダイハツの車に乗っていたので、何だか違和感を感じてこんな記事を書いてみました。
言っときますけど、ダイハツの車を批判している訳ではありませんよ。あくまでも風見さんとのイメージが合わなかったので、ちょっと気になったのです。
で、よく考えてみると、自動車とは関係なさそうな逃げ恥の中で、実は車も結構面白い描かれ方をしているのが分かりました。連ドラからの伏線もあったりと、裏で結構車が活躍していたのです。
とにもかくにも、逃げ恥には様々な要素が丁寧にちりばめられており、やっぱり最高なドラマだと改めて思った次第です。こういう特番のスペシャルって、あまり面白くなかったりするものですが、連ドラと変わらず楽しめました。またやって欲しいですね。