プラドを購入するにあたってオプションの選択にはもちろん悩むことになります。しかし、それよりも大きな問題と言えるのが、エンジンをガソリンにすべきかディーゼルにすべきか、この究極の2択ではないでしょうか。
ガソリンだと車両価格は安いですが、燃費は良くないですし、軽油より高価なレギュラーガソリンを使用することから、ランニング費が上がります。それに重い車体を引っ張るのに、ディーゼルと比較して細いトルクで頑張らなければなりません。
一方、ディーゼルは燃費が良いですし、燃料も安い軽油です。パワーもあります。しかし、ガソリンのモデルと比較して66万円程も高い車両価格です。
そう、この66万円の価格差が絶妙であり、もう少し安ければディーゼル一択なのでしょうけど、いくらランニング費が低く抑えられると言っても、この価格差をペイするには相当な距離を乗らなければならないのです。
結局のところ、自分はディーゼルを選びました。個人的には満足していますが、どちらが良いかは人それぞれでしょう。
今回の記事では、あくまでもディーゼルを選択した立場から、どれだけ乗ればそのランニング費の低さによりディーゼルがお得になるのか、検証してみることにしました。
各エンジンの概要
まずガソリンエンジンとディーゼルエンジンについて、それらのスペックを見ていきましょう。出力はどれだけ違うのか、そして燃費は?
ガソリンエンジン
ガソリンエンジンのモデルで、もっとも安価なのがTX5人乗りで3,621,000円です。ディーゼルのTX5人乗りは、4,285,000円。その差は664,000円。装備に違いはありませんから、純粋にエンジンの違いでこの価格差です。車の見た目にも差はありません。
66万円ってかなり大きな差です。その差を埋めるには、どれだけ走行すれば良いのでしょうか。
次に紹介するディーゼルのスペックと比べると確かに見劣りします。しかし、163馬力や25.1kgのトルクって、一般的にはそんなに低い数値でもありません。しかし、最近の車と比較すると、カタログスペックで10㎞を切る燃費はあまり良くないですよね。
エンジン形式:2TR-FE
排気量:2.693L
使用燃料:レギュラーガソリン
最高出力:120kw(163PS)
最大トルク:246N•m(25.1kgf•m)
燃費(WLTCモード):8.3km/L
ディーゼルエンジン
ガソリンエンジンに比べて、60万円以上も高価なディーゼルのモデル。果たして価格差に見合った価値はあるのでしょうか。
確かに燃費はいい上、馬力もトルクもディーゼルが優っています。トルクに至っては、倍以上の差があります。
スポーツカーなんかだと、エンジン出力が大きいほど正義なんて感じがありますが、そもそもプラドは飛ばすような車ではありません。それならそんな大きなパワーは必要ないかもしれません。66万円の価格差。どうなんでしょう。
ちなみに下記のスペックは、2020年8月のマイナーチェンジ後の数値です。
エンジン形式:1GD-FTV
排気量:2.754L
使用燃料:軽油
最高出力:150kw(204PS)
最大トルク:500N•m(51kgf•m)
燃費(WLTCモード):11.2km/L
ランニング費をもとに、ペイできる走行距離を計算してみる
では、どれくらい走行すれば、ランニング費の安さによりディーゼルのほうがお得になるのか。66万円という価格差を埋めるのは、かなり大変そうです。
まず前提条件として、燃料の価格を調べます。2020年10月直近の全国平均価格を調べてみました。レギュラーガソリンが133.9円、軽油は114.6円でした。この価格をもとに計算してみます。
レギュラーガソリン:133.9円/L
軽油:114.6円/L
リッターあたり、約20円の差があります。燃費も約3km/Lディーゼルのほうが良いですから、もしかするとすぐに価格差は埋まってしまうかもしれません。計算してみましょう。
まず1km走行するときのコストを計算します。
1L÷8.3km≒0.12L
1km走行するのに、0.12Lのガソリンを消費します。
0.12L×133.9円≒16.1円
1km走行する時のガソリン代は、約16.1円となりました。
これが1km走行するときのコストです。回りくどい計算をしましたが、
133.9円÷8.3km/Lだと一回で計算ができます。
1L÷11.2≒0.09
1km走行するのに0.09L消費します。
0.09L×114.6円≒10.3円
1km走行する時の軽油代は、約10.3円となりました。
こうして計算してみると、1km走行するのに約6円ランニング費に差が出ることが分かりました。正確には5.8円ですね。
16.1円-10.3円=5.8円
では、どれだけ走れば、価格差をペイできるのか。車両価格の差を、上記で計算した1㎞走行時のコスト差で割ることで計算できます。
664,000円÷5.8円/km=114,482.759km
約11万km。途方もない距離です。一年1万km走行するなら、11年以上かかる計算になります。プラドは長く乗る人も多いでしょうけど、ペイするためには気の遠くなるような期間がかかるのです。
ディーゼルには補助金と減税あり
ディーゼルは確かにランニング費は安くなりますが、車両価格をペイするのは相当困難です。それならガソリンで良さそうです。
しかし、このディーゼルエンジン。ただのディーゼルではありません。クリーンディーゼルなのです。環境に優しい車なのです。ほんまかいなって感じですが。環境に悪そうですよね。
まあ、環境に優しいということになっていますので、補助金や減税が受けられます。ガソリンモデルではそれはありません。ディーゼルエンジンを選ぶことで受けられる補助金や減税を紹介しましょう。減税については、いわゆるエコカー減税ですね。
クリーンエネルギー等導入促進対策費補助金
電気自動車やハイブリッド、クリーンディーゼルなどエコな自動車を購入すると、補助金が支給されます。ディーラーから申請してくれて、後々口座に振り込まれます。
26,000円の補助金を受け取りました。ガソリンエンジンは対象外です。
自動車重量税
取得時や車検時にかかる税金です。エコカー減税の対象となれば、自動車重量税が減税されます。プラドのディーゼルだと、100%免税となります。具体的には37,500円の減税額でした。
環境性能割(自動車取得税)
自動車を購入した時にかかる税金です。かつては自動車取得税でしたが、現在は取得税は廃止され、その代わりに環境性能割となっています。車両価格に0〜3%の税率をかけて計算します。この車両価格は、販売価格ではありません。だいたい販売価格の90%程度になるようです。
ディーゼルの場合、税率3%が軽減されます。つまりかからなくなります。ガソリンは、1%の軽減です。
自分のTX5人乗りのディーゼルモデルだと、105,100円の減税です。同じグレードのガソリンだと、29,600円が軽減されます。
自動車税
購入した翌年の自動車税が減税されます。グリーン化特例と呼ばれます。ガソリン、ディーゼルともに年間の税額は51,000円。ディーゼルだと、1年間だけ本来51,000円の自動車税が13,500円となります。37,500円の減税です。
以上の補助金や減税額を合わせると、ディーゼルだと206,100円、ガソリンでは29,600円となります。差額は176,500円です。
664,000円-176,500円=487,500円
車両価格の差額が結構縮まりましたね。もう一度走行距離を計算してみましょう。487,500円から、1kmの走行コストを割ってみます。
487,500円÷5.8≒84,052km
補助金や減税額を考慮すると、ペイできる距離が結構縮まります。84,000kmなら乗りそうですよね。
細かい費用に注意!
ディーゼルの場合、追加でかかるコストがあります。クリーンディーゼルならではのコストが発生するのです。それがアドブルー代。
アドブルーとは、いわゆる尿素水です。この尿素水によって排気ガスに含まれる有害物質を除去しているのです。このアドブルーが切れた状態では走行できないようになっており、定期的な補充が必要です。
だいたい1,000kmちょっとで1L消費するとされています。価格はそれほど高くなく、5Lで2,000円弱で販売されています。
例えば8.4万km走行した場合、どれくらいのアドブルー代が必要なのでしょうか。1,000kmで1L消費して、5Lで2,000円と仮定します。計算すると33,600円でした。これにより、6,000km程度追加で走らないとペイできないことになります。
アドブルー代以外にも、追加の費用はあります。ローンでの購入ですと、当然金利が発生します。借り入れ金額が同じであれば特に考慮する必要はありませんが、ディーゼルにすることで借入額が増えるのであれば、その分金利負担も増えることになります。
フィーリングという要素も
これまでは客観的なコストを比較してきました。アドブルー代も入れると、90,000kmくらい走行しないと、ガソリンのほうがトータルコストが低いことが分かりました。
しかし、車はただ実用的であるだけではなく、感情にも訴えかけてくる道具です。簡単に言うと個人の好き嫌いや好みの問題ですね。
スペック的にも、当然ディーゼルのほうがストレス無く走ることができそうです。特にプラドは2tを超えるような重量級の車体なので、発進や坂道ではトルクの大きさが重要な要素です。
発進や坂道の遅さに強くイライラを感じる人であれば、ディーゼルエンジンの価値は大きくなるでしょうし、特に気にならないのなら大きな価格差は無駄になるかもしれません。
あくまでも個人的な感覚ですが、このパワーの差には20万円程度の価値があるのではと考えました。電動ムーンルーフの倍くらいの金額ですね。
この個人的感覚の産物である20万円を実際の金額的な価値として考えて計算してみましょう。
487,500円-200,000円=287,500円
287,500円まで価格差が小さくなりました。
287,500円÷5.8円/km≒49,569km
やったー、5万km走ればディーゼルエンジンの方がお得になりそうです。2回目の車検を受けるようなタイミングですね。もちろん机上の空論なので、色々な条件によって結果は異なってくるでしょう。
まとめ
ディーゼルエンジンに乗っているので、その立場からのポジショントークでした。最後は強引にディーゼルはお得であると仕立てたのでした。
ランドクルーザープラドってかなり丈夫な車であり、10万kmまでは慣らしなんて言われることもあります。計算上は9万kmくらいでガソリンよりディーゼルがお得になるのであり、ちょうどその慣らし期間を終えるタイミングで逆転するのです。改めて絶妙な価格差だと思えてきました。うまく値付けしますよね。
経済的な面も重要ですが、個人のフィーリング的な面も車選びには重要な要素だと思います。後々後悔しない選択をしていただければと思います。
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