うちの会社でも従業員持株会の制度があります。福利厚生の一環として、多くの企業で導入されています。自社株の積み立て購入により、従業員の資産形成を手助けする制度ですね。現在は東証に上場していますが、上場前から加入していた人はかなりいい思いができたようです。
ところが近頃は株価も低迷し、含み損を抱えている人も多いようです。資産形成どころか結果的にお金を失った形です。自分の周りでも、入るんじゃなかったっていう話を良く聞きます。加入するタイミングによって、結果に大きな差が出ているのです。
自分は入社当初から加入していませんでした。当時はそんな知識もありませんでしたから、持株会のリスクを勘案して加入をやめたという訳ではなく、ただ単純にお金がないという理由ではありましたが。結果的にはそのような選択をして良かったです。
では、この持株会ってどんな制度なのでしょうか。そして加入することのメリットやデメリットってなんでしょうか。考えてみましょう。
従業員持株会社ってどんな制度?
従業員が給与から一定額を拠出して、自分の会社の株を積み立てる制度です。従業員の財産形成を目的とした福利厚生の一環として導入されています。
従業員持株会という組織が作られ、従業員は持株会に資金を拠出、そして持株会が市場から自社株を購入して管理します。
株式を購入する際には、会社からも奨励金として資金が拠出されます。10%の奨励金を出す会社であれば、毎月5,000円を設定している場合でも5,500円分の株を購入してくれることになります。
多くの上場企業で取り入れられており、持株会が上位の株主である企業も多く存在します。例えばANAホールディングス。航空会社です。早く旅行行きたいですね。ANAの従業員持株会は約381万株で全体の1%の株式を保有しています。株数で9位の株主となっています。
では、働き方改革で話題のサイボウズはどうでしょうか?従業員持株会は4.7%を保有する4番目の株主です。結構上位ですね。年々株価が上昇していますので、こんな企業の持株会に加入しているといいですよね。
従業員持株会のメリットは?
福利厚生の一環なので、もちろん加入する従業員にとってメリットのある制度です。どんなメリットがあるのか見てみましょう。
給料天引きで資産形成できる
会社が自動的に給料から天引きしてくれますので、半強制的に積み立てを行なうことができます。どうしても意志というのは一定ではなく、時には弱くなることもあります。意識することなく自動的に気づかずに行なうのが続けるコツです。どうしても欲しいものを買っちゃいますもんね。
会社から奨励金が出る
積み立て額に対して一定の割合で奨励金を加算してくれます。5%出してくれるのであれば、毎月5%分余分に株を購入できますので、長期になると大きな差になりそうです。
ちなみに自分が勤める会社は、5%の奨励金を出しています。
配当金が出る
もちろん自社が配当を出していることが前提ではありますが、持株会といえども立派な株主なので、当然配当金を受け取ることができます。年数が経つと持株も増えるので、より多額の配当金を受け取れるようになります。
自社の株が買える
実は自分が所属する会社の株を購入することは違法となります。いわゆるインサイダー取引ですね。社内にいると社外では分からない情報を入手することができ、それが株価に影響しそうな大きな情報であるとすると、発表前に自社の株を購入しておくことで、大きな利益を得ることができます。ただし、そうした行為は市場の公平性という観点からは良くない行為であり、処罰の対象となるのです。
持株会であれば、自社株を購入しても問題ありません。
上場時に大きな利益も
非上場であっても従業員持株会を実施している企業もあります。非上場の会社が株式市場に上場する際には、上場直後に大きく株価が値上がりすることが良くあります。
うちの会社も現在は東証に上場していますが、上場前から持株会に入っていた人はかなりいい思いをしたと聞きます。
従業員持株会のデメリットは?
いいことを書いてきましたが、もちろんデメリットもあります。果たしてどんなデメリットがあるのでしょうか。
分散ができない
資産形成の基本は長期、分散、積立とされています。持株会だと長期の積立は可能ですが、分散ができないのです。投資の格言で、卵は一つのカゴに盛るなという言葉があります。複数のカゴに分散して卵を入れておくことで、一つのカゴを落としてしまっても、卵が全部割れてしまうことが避けられます。卵はお金のことで、カゴは投資先ですね。つまり分散することの重要性を説く格言なのです。
自社株を買うということは、一社の株だけに集中するということです。これはかなりリスクの高いことです。持株会は分散投できず、リスクの高い方法となってしまうのがデメリットの一つです。
労働収入と投資を一社に集中
労働も投資と考えてみましょう。そうするとすべてを一社に集中してしまうことになります。もし自分の働く会社が傾いたらと考えると恐ろしいですね。日本全体が成長している時期であればまだいいのでしょうが、これからは何が起こるか分かりません。
副業しないのであれば、収入は一社に頼らざるを得ません。それなら分散させる意味でも資産形成は別にする方が賢明と言えそうです。
値下がりのリスク
株なので、当然下がることがあります。相場の動きに左右されますし、会社の業績が悪くなる可能性もあります。
うちの会社なんかもそうですが、だんだん株価が下がるかほぼ横這いの状態が続いています。横這いであるなら、購入時の奨励金や配当金が入ってきますので、損することはないのでしょうけど、資産が増えていかないですよね。株価の高い時期から加入している人は、含み損を抱えているようです。大きく値下がりするようなことがあると、何のために積み立ててるんだということにもなりますし、その会社で働くモチベーションの低下にも繋がりそうです。
特にあまり成長しない業界は注意が必要です。株式市場は人気投票みたいなもので、この会社や業界は成長するだろうと考えられると資金が集まって株価が上昇します。アメリカのテスラがいい例ですね。トヨタの時価総額を抜いたと話題になりました。売り上げや利益はトヨタとは桁違いで少ないのですが、成長への期待から投資が集中し株価が大きく上昇しているのです。これから大きく成長しないと考えられている業界の企業だと投資先としての人気が上がりませんので、株価も上がりづらくなります。業績は良くても、株価は長期で低迷してしまうということもありえます。
こういうこともあるので、一社に集中するのは危険であり、分散した方が良いと考える理由です。
すぐには売れない
通常の株式投資であれば、大きく値上がりしたタイミングを見て売却することができます。
持株会の場合は色々大変です。会社に解約のための申請書を出さなければならないですし、申請書を出したからといってすぐ売ってくれる訳ではありません。2週間くらいかかるのではないでしょうか。
そうなると売りたいタイミングは逃してしまいます。急にお金が必要ということがあっても、すぐには現金化できません。
退会の方法は?
持株会の退会は2つの方法があります。一つは時価で売却し現金を受け取る方法、もう一つは現物の株式を受け取る方法です。株式は基本100株単位でやり取りします。現物を受け取る場合、100株に満たない端数が必ず出てきます。端数に満たない分を追加で購入し100株にした状態で受け取ることになります。
会社としてのメリット
もちろん会社側にもメリットがあります。会社の場合、どちらかと言うとデメリットよりもメリットの方が大きいのではないでしょうか。以下のようなメリットがあります。
もの言わない株主が増える
従業員持株会はそう簡単には売却することはありませんし、多くの株を持っているからと言って経営に口を出すこともないでしょう。つまり安定株主を増やすことができます。
持株会は一定額を毎月毎月定期的に購入しますので、株価も下がり難くなります。
福利厚生を充実するという姿勢
従業員の福利厚生のために様々な制度を導入することは、会社は従業員のことを考えているという姿勢を示すことができ、モチベーションアップに寄与します。持株会もその一環ですね。
ただ持株会の場合、上場したり株価がどんどん上昇するイケイケどんどんな会社であればモチベーションアップの効果が高まって頑張ろうという気持ちになりそうですが、万年低迷しているような会社だと逆効果になるかもしれません。まさにうちの会社がそうで、含み損を抱えている人もいます。「やらんかったら良かった」という声も聞こえてきます。
個人的な考えは、入らない方が良い
資産形成としては、リスクが高すぎると思います。例えば月々3万円持株会に拠出するのであれば、その3万円をつみたてNISAに振り向けてインデックスファンドを購入した方が幸せになれそうな気がします。市場全体に分散するのであれば、10年20年という長期であれはマイナスとなる確率がかなり低くなるのですが、個別の一社だとかなりリスクが高くなりますし、最悪の場合倒産するかもしれません。
社会の変化のスピードがかなり早くなっています。自社の製品がすぐに他の製品に置き換えられてしまいかねません。しかもこれまで想像もつかなかったような製品に。もちろんその変化に対応して大きく株価を上げる企業も出てきます。従業員持株会の問題点は、まさしく自社の株しか買えないことです。自分の会社がずっと成長するのならいいのですが、そんなことってそうそうないですよね。
どうしても持株会に加入したいのであれば、つみたてNISAを33,333円の満額を積み立てて、さらに確定拠出年金をして、さらに資金に余剰があれば少額行なうのがいいのではないでしょうか。1,000円から積み立てられることが多いですし。
まとめ
以上従業員持株会についてまとめました。個人的には分散ができず一社に集中することになりますので、そのリスクの高さから持株会については批判的な立場です。どうせなら、つみたてNISAを優先すべきであると考えています。
上にも書きましたが、卵は一つのカゴに盛るなを忘れてはいけません。従業員持株会は一つのカゴに持ってしまう行為なのです。